TikTok Shopが日本でも6月から本格始動します。ショート動画やライブ配信を活用したエンタメ型ECとして注目を集める一方、導入すべきか迷っている企業担当者も少なくありません。
本記事では、TikTok Shopは日本でいつから始まるのかや、どのような機能があり既存のECと何が違うのかなどをはじめ、自社運用か発送代行かといった物流体制の選択肢まで、導入に向けて整理すべきポイントを網羅的に解説します。
TikTok Shopとは?
TikTok Shopは、TikTokアプリ内でショート動画やライブ配信を通じて商品を販売し、購入まで完結できる新しいEC機能です。
従来のSNSでは、商品紹介から購入までに複数のステップや外部リンクを介することが一般的でした。TikTok Shopは、商品とユーザーの出会いから購入・決済までを1つのアプリ上で完結させることにより、購買体験における「分断」を取り除いています。
例えば、ある企業がTikTok上で「使ってみた」形式のショート動画を投稿した場合、視聴者はその動画内に表示されるカートアイコンをタップするだけで、商品ページへ遷移し、購入に進むことができます。ライブ配信中であれば、コメントで質問しながらすぐに購入することも可能です。

TikTok Shopでは、商品販売に関わるプレイヤーが大きく3者に分かれます。「セラー(出店者)」「クリエイター」「ユーザー(購入者)」です。
セラーはまずTikTok Shop上で店舗登録を行い、商品を出品・設定します。その商品を、クリエイターが動画投稿やライブ配信を通じて紹介することで、ユーザーに届けられます。なお、セラー自身がクリエイター活動(動画・ライブ)を兼ねることも可能です。
ユーザーは動画やライブを通じて商品に興味を持ち、TikTokアプリ内でそのまま商品を購入します。購入された商品は、原則としてセラーからユーザーに直接発送される仕組みです。
このように、エンタメと購買が一体化した販売フローにより、TikTok Shopは商品との自然な出会いと即時購入を可能にしています。
日本での展開はいつから?
TikTok Shopは、2025年6月から日本国内での本格展開が予定されており、企業が販売チャネルとして活用できる新たな選択肢となります。
これまでTikTok Shopは、中国や東南アジア、米国、英国などを中心に先行展開されてきました。特に東南アジアでは、短期間で爆発的な成長を遂げており、ライブ配信による購買体験が日常的なものになりつつあります。
日本におけるTikTokのアクティブユーザー数は、2025年5月時点で3,000万人以上ともいわれています。中でもZ世代を中心に高い普及率を示していますが、近年は30代以上のユーザーも増加傾向です。
また、2025年6月に予定されている日本での正式なサービス開始に向けて、TikTokは国内の企業や個人事業主を対象にセラー登録の方法を公開しています(参照:TikTok Seller CenterでTikTok Shopを設定する方法|TikTokビジネスヘルプセンター)。この動きは、TikTok Shopが日本市場での展開を本格化させる準備段階にあることを示しています。
TikTok Shopの主な機能
TikTok Shopでは、アプリ内で商品紹介から購入までを完結できる複数の機能が用意されており、企業がZ世代を中心としたユーザー層にリーチしやすい設計になっています。
従来のECでは、ユーザーが外部リンクに遷移したり、複数のステップを踏んだりする必要がありました。一方、TikTok Shopは「動画を見て、気になったらその場で買える」体験を重視しており、そのための機能がアプリに標準で搭載されています。
ここでは、TikTok Shopの主な機能を4つ紹介します。

カート付きショート動画
TikTok上に投稿されたショート動画に、商品リンクを埋め込むことができる機能です。
ユーザーはおすすめフィードで流れてきたショート動画を見ながら気になった商品をタップし、そのまま詳細情報を確認・購入できます。短尺の動画を通じて、商品の使い方や雰囲気がすぐに伝わるため、ユーザーの即時の購入判断を後押しできるのがショート動画の強みです。衝動買いとの相性が高く、販促効果も期待できます。
LIVEコマース
ライブ配信を通じて、リアルタイムで商品を紹介・販売できる機能です。配信中のコメントを通じてユーザーに商品の魅力や使用感を即座に伝えることで、ユーザーのエンゲージメント向上につなげられます。
ショーケース
TikTok Shop上に自社商品専用の一覧ページ(ショーケース)を持てる機能です。ECサイトに近いデザインで、人気商品への導線設計やカテゴリー分けによる回遊設計などもできます。
カート付きショート動画が、動画視聴中に即購入を促す機能であるのに対し、ショーケースはブランド全体の世界観を整理してみせる役割を担っており、リピート購入や複数商品購入につなげやすくなります。
ショップタブ
TikTokのアカウントプロフィールに「ショップタブ」を表示できる機能です。アカウントを訪問したユーザーが、投稿コンテンツだけでなく販売中の商品にも自然にアクセスできるようになります。
また、TikTokのレコメンドシステムを利用して、ユーザーが興味を持ちそうな商品を上位に表示します。
他のECと何が違う?TikTok Shopの特徴
TikTok Shopは、単なるEC機能を搭載したSNSではなく、TikTok独自のユーザー体験に最適化されたECプラットフォームです。従来のモール型ECや他SNSプラットフォームとは一線を画す特性を持っています。
既存のECではそもそも購入したいと思っている商品が決まっていて、どのブランドやメーカーのものにするかを探してから購入する人が大半です。一方、TikTok Shopではユーザーが日常的にショート動画を楽しむ過程のなかで商品と偶然に出会い、共感・興味・購買まで一気通貫でつながる仕組みが整備されています。
高いエンタメ性でユーザーのエンゲージメントを向上
TikTokは、動画投稿やライブ配信における「没入感」や「共感力」の高さが特徴です。特にライブ中には、投げ銭・ギフト・コメント機能など、参加者との双方向性が高く、ユーザーが商品だけでなくブランド自体のファンになるきっかけが生まれやすい環境です。
Instagramなどの他のSNSにもライブ機能はありますが、TikTokは配信中にクイズやゲーム形式を取り入れられるなど、エンタメ要素を自由に盛り込める演出の柔軟性も高く、商品紹介を単なる説明ではなく盛り上がるコンテンツとして届けることができます。
これにより、視聴者のブランドや販売者そのものへの親近感や好感度を高めやすいのがTikTok Shopの特徴です。
TikTok特有のレコメンド精度と拡散力で自然流入から即購入を訴求
TikTok以外のSNSでは、フォロー基盤が中心のため、新規リーチに限界があります。
例えば、Instagramのフィードやストーリーズが表示されるランク付けでは、まず初めにユーザーがフォローしている人によってシェアされたものが自動的に表示されるようになっています。その次に、ユーザーの好みに合わせたコンテンツが表示される仕組みです(参照:Instagramの仕組みを解き明かす|Instagram from Meta)。
一方で、TikTokのおすすめフィードは、フォローしていないユーザーにも関連性の高いコンテンツを届けるレコメンド精度が強力で、自然流入が期待できます。TikTokは、コンテンツベースでアルゴリズムが構築されており、フォロー外のユーザーであったとしてもユーザーの興味に合わせた動画がレコメンドされます(参照:TikTokが「おすすめ」に動画をレコメンドする仕組み|TikTok)。
ユーザーが意図せず商品紹介動画に出会い、関心を持ってそのまま購入へとつながるといった、偶発的な発見と購買の導線こそが、TikTok Shopならではの強みです。
アプリ内で完結する購買体験
TikTok Shopでは、商品の訴求から購入・決済までをアプリ内で完結できます。
リールなどの動画から外部ECサイトに飛ばす必要があるInstagramと異なり、TikTokは1本の動画の中に「商品紹介→購入導線」が埋め込まれており、離脱リスクを大幅に軽減します。これはコンバージョン率を高めるうえで大きな要素です。
TikTok Shopの安全性を支える10の技術
TikTok Shopは、楽しさと利便性だけでなく、ビジネス利用にも耐えうる高度な安全対策が講じられたECプラットフォームです。
ユーザーとセラーの双方が安心して利用できる環境を構築するため、TikTokは決済・返品・プライバシー・知的財産保護に至るまで、多層的な安全対策を実装しています。これは企業にとって、安心してTikTok Shopを新たな販売チャネルとして活用できる根拠となります。
安全な決済オプション | 暗号化通信と外部決済プロバイダーによるセキュアな取引環境を構築 |
購入者保護 | 配送中の破損・紛失に対する返金保証、最大90日の補償制度 |
簡単な返品・返金・キャンセル対応 | 30日以内の返品が無料、主要配送業者による簡易な返送が可能 |
24時間対応のカスタマーサポート | バーチャルヘルプセンターによる24時間サポート、営業時間内はスタッフによるライブチャット対応も |
知的財産権(IPR)の保護 | 偽造品排除のための監視・対応体制と出品ガイドラインの厳格化 |
データプライバシーの確保 | 年齢に応じた制限・選択機能を搭載し、ユーザー主導の設定管理が可能 |
テクノロジーへの投資 | AIと機械学習による違反検知・危険商品フィルタリングを実装 |
禁止商品に関するポリシー | 法規制・TikTok独自ルールをもとに不適切な出品をブロック |
販売者およびクリエイターの審査と認証 | 本人確認書類の提出や法人種別に応じた登録審査を徹底 |
テスト購入プログラム | 違反行為を発見するために運営が自ら購入し、適切な対応を実施 |
参照:10 ways TikTok Shop works to ensure a safe shopping platform|TikTok Shop
TikTok Shopで売り上げを伸ばすポイント
TikTok Shopで成果を上げるには、動画コンテンツの設計や販促施策、販売体制の最適化までを戦略的に整える必要があります。
TikTok Shopは、ただ商品を掲載するだけでは成果につながりません。TikTokというエンタメプラットフォームの特性を理解したうえで、ユーザーの購買行動を促す設計と仕掛けが求められます。
ここでは、TikTok Shopで売り上げを伸ばすポイントを紹介します。
ショート動画で商品の価値を伝える
TikTokでは、商品の特徴や使用感を15〜60秒のショート動画で伝えることが求められます。
単なるスペック説明ではなく、「使ってみた」「比較してみた」「Before/After」といった体感ベースの訴求が有効です。特にZ世代は文字よりも画像や動画から情報を受け取ることに慣れており、動画映えする構成が購買の鍵となります。
ライブコマースを販促イベントとして活用する
TikTokのライブ配信は、双方向コミュニケーションによってユーザーの参加意識を高められるため、購買への即効性が高い施策です。
配信中にリアルタイムでコメントに回答したり、限定オファーを出したりすることで、視聴者の購買行動を即座に引き出すことが可能です。セールやキャンペーンと組み合わせると効果がさらに高まります。
インフルエンサーやクリエイターとの連携
TikTokでは、企業発信よりもクリエイターによる自然な紹介コンテンツの方がユーザーの信頼を得やすい傾向にあります。
クリエイターに成果報酬を支払うアフィリエイト機能を使えば、初期コストを抑えながら販路拡大が図れます。販促リソースが限られている企業にとっても有効な選択肢です。
購入から配送までのスムーズな体制を整備する
どれほど商品や動画の訴求が魅力的でも、配送が遅れたり対応がぞんざいだったりすると、ユーザーの満足度は低下します。
「Z世代白書2023」では、Z世代ユーザーがTikTokで好きなコンテンツにおいて、「商品開封動画」や「ファッション・メイク」「景色・旅行」といったコンテンツが上位を占めています(参照:TikTok for Business、「Z世代白書2023」を発表 〜TikTokはZ世代の「自分の遊び方を見つける、自由に自遊する遊び場」〜|TikTok for Business)。
商品開封動画では、商品が届いてから開封するまでの一連の流れがショート動画で投稿されるため、見た目にも配慮された梱包がレビューやブランドイメージに直結しやすくなっています。
もし配送体験に対して不満があれば、レビュー評価の低下やリピート購入の機会損失につながる可能性もあるでしょう。そのため、スムーズな出荷・在庫管理体制を整えることが、TikTok Shop運用では不可欠です。
TikTok Shopの成功事例
TikTok Shopは2023年9月に米国でローンチされ、2024年には年間流通総額(GMV)で90億ドルを突破しています。ショート動画とライブ配信を軸に、Z世代を中心とするユーザー層から高い支持を得て、急成長を遂げました。
中でも上位ストアは、単なる商品紹介にとどまらず、動画コンテンツやインフルエンサーとの連携を通じて、ECの枠を超えた購買体験を提供し、大きな成果を上げています。
ここでは、2024年のTikTok Shop米国市場において、年間売上トップ3を記録したブランドに焦点を当て、それぞれの施策・工夫・成果を紹介します(参照:TikTok Shop in the U.S. 2024 p.22|Momentum Works)。
Micro Ingredients(健康食品・サプリメント)
最も高い売上を記録したのは、健康食品ブランド「Micro Ingredients」です。年間約6,340万ドルの売上を達成し、その約70%をTikTokショート動画経由で獲得しました。
専門性の高い商品を、一般ユーザーにもわかりやすく紹介する動画を数多く展開することによって信頼性を高め、購買に直結する導線を確立しています。
Halara U.S.(アパレル)
2位にランクインしたのは、アパレルブランドの「Halara U.S.」で、年間売上は約6,220万ドルです。売上の78%をショート動画が占めており、着回し提案やユーザー参加型の動画投稿によってブランド認知を拡大しました。
さまざまな体型のモデルを起用することで、多様性への共感を生み出し、エンゲージメントと購買率を高めています。
Tarte Cosmetics(ビューティー・コスメブランド)
3位は、コスメブランドの「Tarte Cosmetics」です。ショート動画とインフルエンサー施策を効果的に組み合わせるなどを行い、約5,860万ドルの売上を記録しています。
具体的には、新作のリリースにあわせてクリエイターによるレビュー動画を拡散し、リアルな使用感や比較動画によって視覚的に購買意欲を刺激しています。ユーザーが「本音で選ぶ」判断材料を提供することで、高い成果を上げました。
TikTok Shop運用の成功に欠かせない物流体制とは?
TikTok Shopを販売チャネルとして安定運用するには、「売れる瞬間」に対応できる柔軟かつスピーディな物流体制の構築が不可欠です。
TikTok Shopでは、突発的に注文が集中するケースも珍しくありません。これに対応できなければ、出荷遅延や在庫切れによる信頼低下、レビュー悪化につながり、せっかくの販売機会を損失してしまうリスクがあります。
TikTok Shopではスピード対応が信頼に直結する
Z世代を中心とするユーザーは、即時性のある購買体験を重視します。
米国の調査結果にはなりますが、マーケットプレイス業界団体International Council of Shopping Centersの調査によると、Z世代が購買体験にスピードと効率性を求めていることが明らかになっています。46%の回答者が「迅速で簡単な支払い」を最も重要な要素と答えており、次に「迅速な配送」が挙げられています(参照:The Rise of the Gen Z Consumer p.6|International Council of Shopping Centers)。
このようにスピード感が期待されるなかで出荷対応が遅れれば、クレームやキャンセルにもつながりかねません。
また、自社で梱包・発送をすべて内製化していると、人的リソースや倉庫キャパシティに限界があるため、一定量以上の注文に対応できないリスクが伴います。
フルフィルメントサービスの活用で運用がスムーズに
TikTok公式の「Fulfilled by TikTok(FBT)」の国内展開が限定的な今、国内のフルフィルメントサービスの活用も現実的な選択肢です。
フルフィルメントサービスを活用すれば、出荷・在庫管理・返品処理を外部に一任でき、企業は「商品設計」や「動画制作」などの販促・企画領域に専念できます。
TikTok Shopのようにライブ配信やキャンペーンなどを通じて突発的に注文が集中するケースでも、スムーズに捌けます。品質が担保された物流体制は、ユーザー評価にもつながります。
TikTok Shopで新たなEC戦略を実現しよう
TikTok Shopは、これまでのECにはなかった動画起点の購買体験を提供し、Z世代を中心とした新たな顧客層と自然につながることができるプラットフォームです。
日本での正式展開を2025年6月に控える今、企業ができる準備は着実に進めておくべきフェーズにあります。
TikTok Shopは、単なる「新しい販路」ではなく、企業のEC戦略そのものを進化させる起点になり得ます。動画制作やマーケティングの内製化に加えて、出荷対応をどう構築するかが、競争優位の分岐点となるでしょう。
ギークプラスでは、フルフィルメントサービスを通じて、TikTok Shopに最適な物流体制の構築をサポートしています。TikTok Shopを本格的な販売チャネルに育てたい企業様は、ぜひ当社までご相談ください。