物流業務において、倉庫保管は重要な役割を果たします。特に自社物流を運営している企業にとっては、効率的な倉庫保管によりコスト削減やスムーズな運営に直結します。
一方で、倉庫保管を委託する際は、倉庫の選定方法や費用面を事前に把握しておく必要があります。
本記事では、自社物流向けと委託向けの倉庫保管について、物流の効率化に向けた方法を両者に分けて解説します。自社での倉庫保管の効率を上げるポイントと、外部委託の費用相場や料金形態を詳しく見ていきましょう。
物流における倉庫保管とは
物流における倉庫保管とは、商品の保管と管理を行う重要なプロセスです。出荷準備が整うまでの間、自社倉庫や物流センターで行われ、商品の品質を維持し、出荷までの流れを円滑に進めるために欠かせない業務です。
倉庫保管の主な目的は、入庫した荷物を適切な場所に配置し、商品を安全に保管することです。そのため、商品の特性に応じて適切な環境を整えることが求められます。
特に、温度や湿度管理が必要な食品や医薬品を扱う場合、厳密な保管体制が必要です。また、金属や機械部品などの耐久性が求められる商品は、劣化を防ぐために防塵や防湿対策を徹底します。
倉庫保管は単に商品を保管するだけでなく、品質を維持し、適切な条件下で管理する役割があり、それを踏まえた上で物流の効率化を進めていくことが重要です。
倉庫保管にこだわることの重要性
倉庫保管にこだわることは、商品の品質や在庫管理、出荷の精度を高めるために不可欠です。ここでは、倉庫保管の役割や重要性を解説します。
商品の劣化を防ぎ品質を維持する
倉庫保管には、商品の劣化を防ぎ品質を維持する役割があり、倉庫保管にこだわることは商品の特性に応じた適切な環境の構築や、防カビや防虫、温湿度の調整など細かな管理の徹底につながります。適切な環境下・管理体制で保管することで、品質を維持し、消費者に安全な商品を届けられます。
さらに、商品の保管場所にもこだわることで、作業効率の向上や取り違えなど人的ミスの予防にもつながります。
盗難や紛失のリスクを回避できる
倉庫保管の重要性の一つに、盗難や紛失のリスク回避が挙げられます。
例えば、高額商品を取り扱う場合、監視カメラ・入室管理システムなどを導入することで、盗難リスクを大幅に軽減できます。倉庫管理システム(WMS)が完備された倉庫に保管すると、在庫数をリアルタイムで把握できるため、紛失リスクの予防が可能です。
このように、安全な環境で商品を保管することで、顧客からのクレームや返品対応の発生率を抑え、効率的な運営につながります。
顧客満足度が向上する
倉庫保管にこだわり、品質の高い商品を顧客の手元に届けられれば、顧客からの信頼を獲得しリピート購入につながります。
例えば、倉庫内のレイアウトや作業動線を改善することで、作業効率が上がりリードタイムの短縮につながります。自動化されたロボットを導入すれば、ピッキングから出荷までのプロセスがスムーズになり、より迅速な配送が可能となります。
これにより商品を迅速に顧客に届けられるため、さらに満足度が高められるでしょう。
作業の効率化でコスト削減につながる
倉庫保管業務を徹底すると、作業の効率化やコスト削減にも大きく貢献します。例えば、倉庫内に在庫管理システムを導入すれば、リアルタイムで在庫状況を把握できるため、過剰在庫や在庫切れを防ぎ、無駄なコストの削減が可能です。
また、倉庫内のレイアウトを見直すことで、同じ面積でもより多くの在庫を保管でき、賃貸料や光熱費の削減につながります。さらに、自動化されたロボットを活用すれば、作業員の負担を軽減し、人件費の削減も期待できるでしょう。
倉庫保管の最適化は、物流の安定やコスト削減、企業の運営の軸になる重要な取り組みと言えます。
【自社物流向け】倉庫保管の効率を上げる5つのポイント
自社倉庫で保管を行う場合、在庫管理の不備や非効率な作業動線など、さまざまな課題を抱えている企業も少なくありません。この章では、自社物流の課題を解決し、倉庫保管の効率を上げる5つのポイントを解説します。
1.作業動線を見直す
自社物流で「リードタイムに時間がかかる」「作業効率が悪い」という課題がある場合は、作業動線の見直しが有効です。在庫棚の面積が広く通路が狭い倉庫では、入庫やピッキング時に作業スタッフや自動ロボットの衝突リスクも高まります。
そのため、入庫から格納、ピッキング、梱包、出荷の流れに沿った動線を設けることが重要です。例えば、以下のような動線設計が考えられます。
動線設計 | 特徴 |
---|---|
I字型動線 | 倉庫の両端に入庫口と出庫口を配置し、中央部分に保管エリアがある直線的なレイアウト |
U字型動線 | 入庫口と出庫口を同じ側に配置し、U字型に商品が流れるレイアウト |
I字型動線は商品が直線的な動きで流れるため、入庫から出庫までの動線が明確で、作業員や機器の動きが重ならず混雑を避けることが可能です。特に大規模な倉庫では、作業の流れが一目で把握でき、倉庫内の作業がスムーズになります。
一方、U字型は限られたスペースを最大限に活用できるため、小型から中型の倉庫に向いているレイアウトです。また、U字型動線は、作業員が物品を取りに行く距離が最短になるように設計されているほか、一か所で複数の作業ができることから、少量多品種の出荷が多い倉庫に適しています。
2.商品や倉庫のサイズに合わせたラックを使用する
倉庫保管の効率を上げるためには、商品や倉庫の特性に適したラックの使用がおすすめです。適切なラックで倉庫保管することで、保管スペースを有効活用できます。
代表的なラックの種類と特徴は以下のとおりです。
ラックの種類 | 特徴 |
---|---|
積層ラック | 中二階、積層棚と呼ばれるラック 天井が高い倉庫などで空間を立体的に活用できる |
高層ラック | 縦の空間を最大限活用できるラック バラやケース単位で保管でき、少量多品種の保管に向いている |
パレットラック | フォークリフトを用いて荷物を収納できる大型の棚 重量ラック・重量棚と呼ばれ、耐荷重は1パレットあたり1,000kg~ 重い荷物を安全に保管できる |
プッシュバックラック | 重量を利用した押し込み格納方式の保管棚 リードタイムの短いロット商品や賞味期限のある保管に適している |
さらに、近年では、自動倉庫システムが注目されています。自動倉庫システムでは入出庫をコンピューターで制御し、ピッキングから出荷までの作業が自動化されています。
そのため、倉庫面積の大部分を保管スペースとして活用でき、倉庫の保管効率の最大化が可能です。ギークプラスでは、ピッキングロボットや仕分けロボットなど自社開発の製品を多数展開しています。
自社倉庫にロボット技術を導入することで、作業の自動化が進み、業務効率が大幅に向上できるでしょう。
3.出荷頻度に合わせて商品を配置する
作業の効率化を図るには、商品の出荷頻度に合わせた配置を行い、倉庫内のレイアウトを工夫することが重要です。出荷頻度が高い商品を倉庫の奥に配置すると、ピッキングに時間がかかるだけでなく、作業スタッフの行き来が増え作業効率の低下につながります。
そのため、頻繁に出荷される商品は入庫口近くに格納することで、作業効率の向上が期待できます。また、流通加工が必要な商品は、ピッキングしやすいメインの通路側に配置すると、作業スタッフの移動距離を短縮し、倉庫全体の作業効率が高まるでしょう。
4.通路幅を見直す
倉庫内の通路幅が広すぎるとデッドスペースが増え、収納効率の低下を招く可能性があります。一方で、通路幅が狭すぎると作業スタッフやフォークリフトがスムーズに移動できず、作業効率が著しく低下します。
そのため、倉庫の規模や作業動線に合わせた通路幅の見直しが必要です。商品の特性に適したラックやレイアウトを導入し、倉庫全体のスペースを有効に使いましょう。
5.倉庫保管サービスを利用する
自社倉庫で「保管スペースが不足している」「在庫管理に手間がかかる」などの課題を抱えている場合は、倉庫保管サービスの利用がおすすめです。物流代行サービスに自社倉庫の作業を外部委託すれば、入荷から梱包、発送まで一貫して任せることができ、業務の効率が各段にあがります。
また、外部に委託することで、自社の作業スタッフが担う業務量が軽減されます。これにより、各スタッフのリソースに余裕が生まれ、これまで手が回らなかった教育やスキルアップの時間を確保しやすくなり、作業スタッフへの教育や人的コスト削減にもつながります。さらに、専門的な管理のもとで商品を安全に保管できるほか、需要の変動に応じて保管スペースの調整も可能です。
ギークプラスでは、ロボット技術を活用したフルフィルメントサービスを提供しており、効率的な物流管理を実現できます。
【委託向け】倉庫保管のアウトソーシングにかかる費用
ここからは、倉庫保管をアウトソーシングする場合の費用目安を解説します。倉庫保管を外部に委託する場合、費用単価は事業者によって異なり、一般的には坪単価やパレット単価で請求されます。
さらに、冷凍倉庫や危険物倉庫などの特殊倉庫の場合は、別途料金がかかるため、各倉庫の特性に応じた費用目安を把握することが重要です。
なお、実際にアウトソーシングする際は、倉庫保管料以外にもシステム利用料や業務管理費、入庫料、梱包、配送料などがかかるため、きちんと確認することが大切です。
坪単価の費用相場
毎月一定の費用がかかる坪単価は、1坪(約3.3㎡)あたりの賃料を指します。坪単価の費用目安は以下のとおりです。
- 坪単価平均:月額4.000円~8,000円
- 首都圏:月額10,000円
- 郊外:月額2,000円~4,000円
倉庫保管の需要が高い首都圏では坪単価が高く、郊外の倉庫では、比較的安い価格が設定されています。しかし、郊外の倉庫の場合、立地条件に注意が必要です。
主要交通機関からアクセスが悪い場所や山間部など、自然災害の影響を受けやすい地域では、配送コストの増加や配送遅延が発生する可能性があります。また、高速道路やインターチェンジの近くなどアクセスのよい立地の倉庫は、坪単価が2倍以上に跳ね上がる傾向があります。
そのため、システム管理費や配送費、人件費などトータルコストを考慮した選択が重要です。
パレット単価の費用相場
パレット単価とは、パレット1枚当たりの保管料を指します。パレット単価の費用相場は、以下のとおりです。
1パレットあたり:月額3,000円〜9,000円
パレット単価は、パレットごとに単価が設定されるため、入荷量に応じて月額が変動します。そのため、固定費の坪単価に比べ、商品の需要変動が大きい商品を扱う企業は、パレット単価の料金形態がおすすめです。
また、倉庫によっては、パレット単価以外にも、ラック単位、個建て、容積建て、重量建て、段ボール単位の委託も可能です。小ロットや1個単位から委託ができる倉庫もあるため、事業内容に合わせた料金形態を選びましょう。
冷凍倉庫の費用相場
冷凍倉庫とは、マイナス20度以下の低温度帯で保管する倉庫です。対象商品は冷凍食品やアイスクリームなどで、ワクチンといった医療品も冷凍保管が必要な場合があります。
冷凍倉庫の保管料の相場は、以下のとおりです。
月額4,000円〜7,000円/坪
東京エリアでは上記費用が相場ですが、郊外では2,700円〜というケースもあり、地域によって単価が異なります。また、光熱費が別途発生することもあるため、温度管理が必要な商品を扱う場合は、追加費用を含めたコストを事前に確認しておきましょう。
危険物倉庫の費用相場
危険物倉庫は、特定の危険物を安全に保管するために設計された施設で、消防法に基づいて厳格な基準が設けられています。消防法が定める特定の危険物とは引火しやすい物質、爆発を起こす危険性がある物質などであり、マニキュアや除光液、ヘアスプレー、ヘアオイル、接着剤、着火剤、ペンキなどが該当します。
危険物倉庫の費用相場は、以下のとおりです。
月額4,000円〜7,000円/坪
この坪単価に加えて、危険物倉庫には危険物取扱主任者を配置する必要があるため、一般的な倉庫よりもコストがかかります。
倉庫保管費用の3つの計算方法
上記で紹介した費用はあくまでも相場であり、実際には以下のいずれかの方法で計算され、請求されるのが一般的です。そのため、倉庫を外部委託する際は、保管費用の計算方法を理解しておくことが大切です。
倉庫保管費用の計算方法は、主に以下の3つの方法があります。
- 一期制
- 二期制
- 三期制
それぞれの計算方法と、具体例を解説します。
一期制の計算方法
一期制は、1ヶ月単位で保管料を算出する計算方法です。計算方式がシンプルで管理の手間が少ないのが特徴です。
一期制の保管料は、以下のように計算します。
保管料=(月初在庫数+月間入庫数)×保管単価 |
【一期制の保管料】
例)以下の場合
保管単価:100円
月初在庫数:20個
月間入庫数:30個
月初在庫数(20個)+月間入庫数(30個)×保管単価(100円)=5,000円
一期制は入庫量をベースに算出されるため、入出庫が大きく変動せず在庫量が安定している商品に向いています。
二期制の計算方法
二期制は、1ヶ月を1日~15日、16日~末日の2つの期間に分けて保管料を算出します。
保管料=(上期保管積数+下期保管積数)×保管単価 上期保管積数:繰越在庫+上期入庫数 下期保管積数:中間在庫+下期入庫数 |
【二期制の保管料】
例)以下の場合
保管単価:100円
上期繰越在庫50個・入庫数10個・出庫数20個
下期繰越在庫40個・入庫数50個・出庫数20個
上期保管料:(50+10)×100円=6,000円
下期保管料:(40+50)×100円=9,000円
1ヶ月の保管料:6,000円+9,000円=15,000円
二期制の計算方式は、物流業界では採用が少ない方式です。在庫の変動がある場合は、一期制より細かく管理ができるため、主に冷蔵・冷凍倉庫で採用されるケースがあります。
三期制の計算方法
三期制は、物流業界では一般的な計算方法です。1ヶ月を「1日~10日」「11日~20日」「21日~末日」の3つの期間に分けて算出します。
保管料=(各期末の保管在庫数+当月入庫数)✕ 保管単価 |
【三期制の保管料】
例)以下の場合
保管料単価:100円
1期:繰越在庫30個・入庫数20個・出庫数40個
2期:繰越在庫10個・入庫数30個・出庫数20個
3期:繰越在庫20個・入庫数50個・出庫数30個
1期の保管料:(30個+20個)×100円=5,000円
2期の保管料:(10個+30個)×100円=4,000円
3期の保管料:(20個+50個)×100円=7,000円
1ヶ月の保管料:5,000円+4,000円+7,000円=16,000円
三期制は、一期制や二期制に比べて入出庫のタイミングに影響が出やすい計算方式です。タイミングを上手く調整できれば、入庫の数量が少ない時に保管料を抑えられます。
まとめ:倉庫保管の最適化で物流の効率を高めよう
適切な倉庫保管は、物流運営を円滑に進める上で欠かせない業務です。自社倉庫の場合は、以下の方法を実施すると効率化が図れます。
- 作業動線を見直す
- 商品や倉庫のサイズに合わせたラックを使用する
- 出荷頻度に合わせて商品を配置する
- 通路幅を実施する
また、倉庫保管サービスに委託することでコスト削減も実現できます。倉庫保管をアウトソースする際は、費用相場や料金形態、保管料の算出方法を理解しておくと委託時の費用感が把握しやすくなります。
自社倉庫や委託倉庫など自社の物流規模に合わせて倉庫保管を最適化して、物流全体の効率を高めましょう。